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潰瘍性大腸炎

病気について

潰瘍性大腸炎は、大腸(結腸や直腸)の粘膜に炎症や潰瘍(ただれたりする事)が発生する病気です。日本では1960年頃までまれな病気の1つでしたが、食生活の欧米化などに伴い急速に増えてきました。比較的若い人に多く、15歳~30歳くらいの方によくみられます。地域差は無く。男女の比率は1:1です。わが国の患者登録数は現在約20,000人ほどですが、実際数はもっと多いといわれています。この病気の特徴は症状が良くなったり悪くなったりの慢性化をたどることです。また症状が極端に悪くなった時には大腸だけではなく他の場所にも病気(合併症)を引き起こしたりするので注意が必要です。
現在多くの研究者が調べていますが、いまだにその原因はわかっていません。ただ、腸管の免疫機構(腸壁から細菌などの外敵が侵入するのを防ぐ仕組み)が過剰に働く事により炎症が引き起こされるのではないかと考えられています。そのため病気が良くなっても、治療を根気良く続けて再発を予防することがとても大事になります。
厚生省の特定疾患(難病)として指定されており、医療費の自己負担分は全額公費で支払われます。

症状

潰瘍性大腸炎の主な症状は便に粘液や血液がまじった粘血便が見られることや、腹部全体の痛みや下腹に限られた痛み、「しぶりばら」(ひんぱんに便意をもよおすのに便がでない)です。症状が進むと発熱、頻脈(脈がはやくなる)、倦怠感(だるさ)、関節の痛みなどが現れることもあります。軽症では粘血便程度で排便回数も1日4回以内のことが多いですが、この病気では軽症といえども発熱などの全身症状を伴う場合もあります。また生活環境の変化、例えば季節の変化や、受験、離婚、事業の失敗といった大きなストレスによって病気の悪化をまねく事があります。潰瘍性大腸炎をはじめとする大腸炎の病気は食生活の変化や現代のストレス社会がその背景にあると考えられています。
合併症の局所症状:狭さく (腸が狭くなる)、中毒性巨大結腸症(腸が急に拡大する)、大出血、瘻孔(腸に穴があく)、大腸癌。
合併症の全身症状:眼病変、アフタ性口内炎、肝機能障害、尿路結石、皮膚病変、関節炎
重症度による分類:軽症/1日数回の血性下痢があるが全身症状はない。中等症/軽症と重症の中間。重症/1日10回以上の血性下痢の他に発熱、頻脈、白血球増多、血沈亢進などの全身症状。

検査・診断

潰瘍性大腸炎の診断は、粘血便、下痢便の確認から始まり、直腸鏡(直腸内部を見るファイバースコープ)による検査で潰瘍性大腸炎の存在を確認します。この方法では病気の有無だけではなく粘膜の一部を採取して細胞組織の検査も可能です。このようにして得た正しい診断で正しい治療を行いましょう。粘液や血便を伴う下痢が治らずしばしば見られたら専門医を受診して直腸指診か直腸鏡検査を受ければ早期発見につながります。
大腸内視鏡検査:肛門よりファイバースコープを逆行性に大腸内部奥深く進め、空気を送り込み、大腸を膨らませて大腸の内側を観察しながら写真撮影も行います。現像されたフィルムを拡大して診断します。
検査前に大腸内を空にする必要があるので、検査前3日より特別食を用意することがあります。前日には下剤を服用し、当日は浣腸を行います。腸に炎症がある場合は下剤の使用には注意が必要です。当日は絶食ですがどうしてもお腹が空いた時は砂糖入りのコーヒー、紅茶、ジュースなどをとります。(牛乳は禁)

潰瘍性大腸炎の治療

薬物治療

軽症では5-ASA製剤の飲み薬による治療が基本となります。重症の患者さんや全身症状を伴う中等症状例ではステロイドの大量療法や免疫抑制剤を使います。

新しい治療法

白血球除去療法
潰瘍性大腸炎は、病巣が1箇所にとどまらないびまん性の炎症をきたす疾患ですが、炎症を引き起こしている白血球は全身を循環している抹消血(骨髄液に対する言葉で、血管を流れている血液をいう。)から補充されます。この白血球そのものを除去してしまえば大腸の炎症も治まるだろうという考えのもとに試みられるようになりました。肘の静脈から血液を採取し、体外循環経路の中で白血球除去フィルターにより白血球を除去し、反対側の肘静脈に返血するという作業を1時間継続し、1回の治療とします。この治療は初めは週1回、緩解が導入できてからは月1回施行していきます。副作用はでにくいのですが、治療効果には大きな個人差があるようです。有効性が厚生省に認可されれば保険診療が可能となりますが、それまでの間新規にこの治療を行う事はできません。
他にも強い免疫抑制剤のシクロスポリンや活性酸素の働きを抑制するスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)を使用する方法なども注目されつつあります。

食事療法

一般的に症状が活動期の場合は腸管からの栄養が妨げられ、体力の消耗を起こす事がありますので米飯、煮込みうどん、パン、おかゆなどの高エネルギー食、良質のたんぱく質(白身魚、皮を除く鶏肉、牛肉赤身、豆腐や高野豆腐などの大豆食品、卵など)、消化の良い食品を補給することが基本です。大腸を刺激するような食物繊維(ごぼう、しいたけ、たけのこ、山菜類、きくらげ、みょうが、セロリ、なし、かきなど)や、下痢になりやすい脂肪の多いものはとらないようにしますが、炎症の程度や範囲によってそれぞれに合わせた食事療法が必要になります。緩解期にはそれほど神経質になる必要はありませんが、暴飲暴食や過度のアルコールの摂取は避けて下さい。また、コーヒーや香辛料、炭酸飲料などは腸管のぜん動を活発にしますので控える方が良いでしょう。このほか、極端に熱いもの冷たいものなど通常お腹に良くないと思われる食品の摂取を避けてれば、普通の食生活でかまいません。再燃期や調子が悪いと感じたら、刺激物やアルコール、脂肪分の多いものは避けるといったセルフコントロールが大切です。

手術療法

潰瘍性大腸炎の多くはは薬物療法でセルフコントロールできる病気ですが、以下のようなケースでは外科的手術の対象となりことがあります。
■大出血が見られる場合、
■中毒性巨大結腸炎(大腸が腫れあがり毒素が全身を回ってしまうもの)、
■穿孔(大腸が破れる)、■癌化またはその疑い、
■薬物療法等の内科的治療に反応しない重症例、
■副作用のためステロイドなどの薬剤が使用できない場合

手術の基本的な考え方は炎症の母地となる大腸粘膜をできるだけ取り除くことであり、大腸の全摘が基本となります。以前は人工肛門を設置する手術が行われていましたが、その後肛門を温存する手術が主流になり、現在では将来的な炎症の再燃の可能性を考えて、直腸も抜去する手術が主に選択されています。この手術は大腸切除後、小腸で便を貯めるための袋を作って肛門をつなぐ方法です。しかし、これらの術式はいうまでもなく個々の患者さんで最も適したものが選択されています。
大腸の切除は大変な治療ですしその後も日常生活上の制限をある程度強いられるかもしれません。しかしこうした犠牲を払う事で逆に家庭生活や仕事、趣味、レジャーなどが自由にできるようになるメリットも大きいので決して悲観的になる必要はありません。
潰瘍性大腸炎の定型手術様式
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